25歳頃、私は知らない男性とよく会っていた時期があった。
会うというのは、体の関係が目的だ。
快楽より、淋しい心を慰めてほしかった
私は初体験を済ませてなかった。けど男性と肌を重ねたかった。
MBTI診断の16パーソナリティの中で私はINFJ。
黙っているだけなのに「動じない」「淡々としている」「冷静」「仕事ができる」と勝手なレッテルを貼られているので、いい方に作用すれば悪い方へ作用することもあった。
恋愛でもそうだ。冷たいと思われてフラれる。
心の中では大切に思っているけど相手には伝わらないものである。
真面目で厳格に見られる外見のせいで、私はいつの間にか見えない鎧を着てうまく動けなくなっていた。
誰にも心を開けず、寂しい気持ちを常に抱えていた。
処女の体と肌を合わせてくれるなんて、と私も思っていた。
どの世界でもどんな需要にも供給があるものである。
あまり詳しく言うとBANされてしまうので言えないけれど、この世には本番はなく前戯だけを希望する男性がいる。
掲示板で募集をして、よさそうなコメントの中から選んで連絡を取っていった。
相手の名前も知らない、私の名前も偽名。
捨てメアドや使わないSNSを使い連絡を取り合った。
ホテル代は男性持ちで、こちらの都合のいい日に合わせてもらって、必要であれば迎えに来てもらえる。
完全に女性主導の世界だった。
会った男性の数は覚えていないけど、いろんな人がいるんだなと思えた。
大抵の人はホテルに現地集合だったけど、どんな人か知りたいと一度スタバで顔合わせをした人。マスクをしていたけど顔を見た瞬間態度を変えて来た人。
共通して言えることは、相手のことは名前すら知らないこと。
私が急に倒れても、彼は救急車を呼んでくれるのか。
家族に連絡が行くのかもわからない関係。
しかも病気をもらう可能性もある。
世間からしたら、やめた方がいいといわれる関係だった。
友達がこんなことをしていたら、私も止める。
だけど私は会い続けた。
だってこの頃の私は、こうでもしないと「普通の人」になれなかった
失恋と宅建試験に何年も落ち続けて自信喪失したガタガタの心を慰めてくれるのは、何年も一緒にいてお互いを知っている親友でもなく、優しく私のことを応援してくれる家族でもなく、身元の知らない男性の肌だった。
そんな夜もあっていい。
だって次の日から、また頑張って生きていかないといけないから。
彼らには仕事終わりに会い、一晩過ごして明け方4時に帰った。
ある日帰り道に24時間スーパーに行き、ビタミン飲料とパンを買ってからお店を出たとき、朝日に目を背けたくなった。
「おてんとうさまが見ている」という言葉があるように、なんだか世間に顔向けできない後ろめたい気持ちだった。
それでも会社には何食わぬ顔で言った。
私は5時間前に名前も知らない男と会っていたことを、ここにいる人は誰も知らない。
また鎧を着て、真面目に仕事に取り組むだけだから。
今思うとあの頃出会った男性達にこう言いたい。
私を普通の女性として支えてくれて、ありがとう。